
就活の次の面接で、「新規事業を考えて10分でプレゼンしてください」という課題が出ました!
でも事業なんて考えたことも無いですし、プレゼンでどう説明したらいいかも検討がつきません。

初めてだと、なかなか大変だと思います。でも安心してください。
まずは「就活向け」に必要な要素を押さえれば、十分に戦えます!
具体的な構成や、企業が見ているポイントを確認しましょう。
就活の課題として出ることがある「事業提案」。
新規事業の提案だったり、既存事業の評価、改善だったりと、ビジネスの思考が求められる難題です。
特に、こうした考え方に馴染みのない学生からすると、難しく感じるかもしれません。
ですが逆を言うと、その考え方を把握さえすれば、誰でも対応することが可能です。
プレゼンの準備やレベルアップのための必読本も紹介しています。こちらもぜひご覧ください!
企業が見ているポイント
新規事業の提案では、市場の分析、顧客の分類、アクションプランの構築などを経て、「だからこの事業は成功確率が高いんです」という事をプレゼンします。
普通のビジネスの場合、新規事業の提案者の目的は出資や投資を得ることです。そして提案される立場である投資家や経営陣は、その事業によって利益を得ることを目的としています。
就活の場合も、提案事項そのものは変わりません。ただ、目的が大きく異なります。提案した学生がそのままその事業を行うことは稀ですし、企業側もその提案で利益を上げること自体が目的ではなく、その学生の能力などを見極めることが狙いです。
(もちろんいい提案があれば実際の事業につながることもあるかもしれませんが)
学生の立場からすれば、「本気で考える必要はあるけれど、気負いすぎる必要はない」ということです。
企業が見ているポイントは、
これらの能力のアピールは、しっかりと対策をすれば何とかなります。就活で企業が求める5つの能力にも関連します(こちらの記事は主に研究職について書かれていますが、新規事業開発や多くの企画職などでも同様の能力は見られています)。
一方で、一見すると重要そうな「オリジナリティ」については、優先順位は少し下がります。
なぜならば、それはとても難易度が高いからです。
世の中を見ても、本当に新しい事業を成功させている人は一握りです。グローバルトップレベルの企業でない限り、学生からいきなり実現可能なレベルの計画を提案されることを期待しているわけではありません。
似たようなアイデアが既に世の中にあっても、大丈夫。独自でなくても大丈夫。間違いなんてありません。
無理に独自性のあるアイデアを探すよりも、「網羅的に深く考えている」ことが伝わるようにした方が、結果的にうまくいくのではないかと思います。
プレゼンの基本的な構成
おすすめする資料の構成は、次の通りです。
新規事業の計画を作成した後、最終的にこの形にまとめていきます。
- タイトル
- 市場機会とニーズ
- ターゲット
- 具体的なビジネスモデル
- 売上・利益の数値計画
なお、スライド資料全体の設定は、スライドマスターおよびレイアウトの基本の記事を参考にしてみてください。
手順
それでは具体的に、どのように計画を作っていくかを見てみましょう。
少し細かいマーケティングの手法も含みますが、理解度に合わせて取り入れてみてください。もし物足りないという方は、もっと詳しく踏み込んでみてください!
対象市場の絞り込み(SWOT分析)
この項目が最初の作業になります。
いわゆる外部環境と内部環境の分析です。これにより、「狙えそうな市場領域」を絞り込みます。

これらの要素は、下図のような4つのカテゴリーに大別することができます。いわゆるSWOT分析と呼ばれる手法です。その他にもPEST分析や5つの力分析など様々な分析手法がありますが、そちらは別の機会に紹介します。
この分析によって、強み×機会=ビジネスチャンス、弱み×脅威=避けるべきエリアなど、目的に応じた「狙えそうな領域」の絞り込みができるのです。今回はビジネスチャンスを狙っているので、強み×機会の要素を探します。

なお、SWOT分析を行う際に最もネックになるのが、どのように業界情報や企業の内部情報を手に入れるか、という点だと思います。
社会情勢や一般的な技術動向などの情報はすでに世の中に溢れており、しっかりと調べさえすれば十分に集まるでしょう。
一方、業界特有の事情や企業の内部情報は、調べるのにコツがいります。
まず、ある程度の当たりをつけるために、企業のホームページで商品情報、企業情報、IR情報(Investor Relations:投資家向け情報)などを見てみましょう。
特にIR情報では、企業の目的、市場環境、業績、今後の成長領域などがレポートとしてまとめられています(上場企業の場合は公開が義務付けられています)。ある意味、企業の公式事業分析なので、必ず見ておいた方が良いでしょう。
もし、どうしても知りたい情報があり、かつ公開情報からは手に入らない場合は、採用担当者に直接聞いてみるのも手かもしれません。他の採用候補者は知らない情報が手に入り、かつ能動的に情報収集する姿勢も伝わります。
企業側も守秘義務があるため答えられない場合も多いと思いますが、失礼にならないように聞けばマイナスにはなりません。ただしその場合も、事前調査をして仮説を立てたうえで、足りない部分を具体的に質問しましょう。漠然と「強みを教えて欲しい」と聞くのはNGです。
以上のプロセスで、機会×強み=ビジネスチャンス を導き出せるのではないかと思います。
繰り返しますが、これはあくまで予測です。必ずしも当たっている必要はありません。
大切なのは、可能な範囲でどこまで情報を集めたのか、そしてその限られた情報からどこまで深く考えたのかという「足跡」を示すことです。
しっかりと情報を集めてSWOTの表にまとめて示すことができれば、網羅的・論理的に答えを導く力があるとアピールすることができます。
※実際のプレゼン資料でSWOTの表を示す際は、最終的な新規事業案に関連する項目のみを表示し、関係ない項目は削除しましょう。シンプルに!
ニーズの仮説
次に、上記で導き出した機会×強み=ビジネスチャンスにおいて、もう少し深く、顧客が求めるものを想像してみましょう。
ここで初めて、具体的な商品やサービスのイメージが出てきます。
世の中に既に存在している同じ領域の商品やサービス、顧客が実は不便に思っていること、顧客が気づいていないが「これがあればもっと便利に幸せになるはず」というものなどを網羅的に書き出してみましょう。
その中から、「顧客がまだ満たされていない」と思える事柄、すなわちニーズを発見したら、それを“ニーズの仮説”として設定して、次に進みましょう。
ターゲット選定(STP)
候補領域とニーズの仮説を設定した後は、その中でさらにターゲット=顧客層を具体的に絞り込んでいきます。
STPとは、セグメンテーション(Segmentation:市場の細分化) ・ ターゲティング(Targeting:ターゲットの選定) ・ ポジショニング(Positioning:自社製品の位置づけ、差別化) の三段階を示すフレームワークです。通常、S→T→Pの順で分析を進めていきます。

セグメンテーション
セグメンテーションでは、まずSWOT分析であたりを付けた領域において、不特定多数の人々をいくつか塊(セグメント)に分けます。
具体的には、性別、年齢、家族構成、地域、行動、ネットとリアル、好みの傾向などの切り口で想定される顧客層を切り分けます。

ターゲティング
続いて、切り分けた顧客層から、目的のニーズに合致した層(=ターゲットにするのに最も適したセグメント)を選び出す、ターゲティングに移ります。
選ぶ基準は、次のような項目があります。
これらが総合的に大きくなる市場と顧客をターゲット候補にしましょう。
※まだ決定する必要はありません。あくまで候補ですので、この後でブラッシュアップすればOKです。

ポジショニング
最後は、絞り込んだ市場と顧客に対し、どのように差別化をするかという軸を決めるのが、ポジショニングです。
顧客に選んでもらうためには、できる限り競合他社の製品とは異なることをアピールする必要があります。他の製品やサービスにない点を洗い出し、独自のアピールポイントを探しましょう。


具体的なビジネスモデル(4P)
ここまでで、どのような製品やサービスを誰に対して売るかは概ね固まりました。最後に、具体的な「どのように戦うのか」について、フレームワークの一つである4P分析を使って説明します。
4P分析とは、マーケティングを4つのP(Product, Promotion, Price, Place)の観点から網羅的に考えるフレームワークです。その他にも異なる視点からマーケティングプランを構築するためのフレームワークがありますが、それはまたの機会に紹介します。
Product 製品
具体的な製品やサービスの詳細を書きます。これまでの分析を踏まえ、どのような機能があり、どのような価値を提供するのかを示しましょう。製品名もインパクトのあるものが良いですね。
Price 価格
値付けは非常に様々な要因が絡んできます。ですがここではシンプルに、コストと販売価格だけを考えましょう。
コストは文字通り、作る/提供するのにかかる全ての出費です。
販売価格は、コストよりも高くするのが一般的ですが、「商品やサービスの価値に対して、これなら顧客が買いたいと思うかどうか(価格受容性)」という視点で設定する必要があります。
売上 − コスト = 利益 という構造です。これは一般的な商品販売だけでなく、手数料ビジネスやサブスクリプションなどのモデルでも同様です。
Promotion コミュニケーション方法
製品が決まったら、それを顧客に認知してもらい、購入に繋げなくてはいけません。
SNS、Webサイト、実店舗など様々な認知方法があります。顧客がどのような順序で知り、理解し、購入を検討し、他の商品と比べ、そして購入に至るのかという順序を考えながら、最適な組み合わせを探しましょう。
Place 流通チャネル
最後は、実際の製品やサービスをどのように届けるのかという点です。
具体的には、自社で店舗を用意、他の販売店に卸売り、代理店を経由して販売、自社Webページから販売、Amazonや楽天のプラットフォームを使用、アプリ、顧客間での販売など、様々な選択肢があると思います。
数値計画
最後に、上記の設定でどのくらいの利益が出るのかを簡単に計算してみましょう。
この商品と価格であればどのくらい売れて、いくらのコストがかかるのか。そしてその差が利益です。
売上 ー コスト = 利益
とてもシンプルですね。
売上数量などは、実際には市場規模やシェアの情報などから推定していく必要があります。ただし、その多くは有料データのため、個人が購入することは現実的ではないかもしれません。そうした場合は、「仮にターゲット顧客のX%が購入した場合、Y%の場合…」という仮定を置いたうえで、何パターンかを示すのが良いと思います。
なお、日本の人口動態や賃金、消費実態などのデータは政府の統計を自由に見ることができます。
こちらから検索可能です → 政府統計の総合窓口 (e-stat.go.jp)
世界の市場情報などは、市場データのプラットフォームであるStatistaがオススメです。無料の閲覧範囲はかなり制限されていますが、概要を把握するだけなら活用できます。基本データとして、関連する項目をぜひ活用してみてください。日本語のトップページはこちらです。
なお、シンプルで分かりやすい表やグラフは簡単に作ることができます。下記の記事に細かい手順を丁寧に解説していますので、是非ご覧ください。


繰り返しブラッシュアップ
ここまでの分析やプラン構築を進めていく中で、論理が行き詰ったり、矛盾が発生することがよくあります。
例えば、「最初に○○の領域に絞り込んだが、後でコストが割に合わないことが分かった」などの場合です。
その場合は、もう一度問題のステップに戻って再分析を繰り返し、計画をブラッシュアップしていきましょう。一発で言い案ができることはありません。何度もブラッシュアップのサイクルを回すことで、どんどん良い案になっていきます!
ビジネスモデルを図に落とし込む
事業計画の全体像(=ビジネスモデル)を考える際は、図にしながら考えると頭が整理されます。
そしてプレゼンの際は、最終的に決定したビジネスモデル全体の概念図を用意すると分かりやすくなります。企業、パートナー、顧客の対応関係と、その間での商品やお金、情報の流れを可視化するのです。

なお、分かりやすい図やイラストの入手方法や作り方はこちらの記事で紹介しています。誰でもすぐに試せます!
タイトル(一言で表す内容)
タイトルは最後に作ります。事業の内容を端的に表す、とても重要なポイントです。
分析や戦略をじっくりと練った後で、事業の内容が一言で伝わる一文を考えましょう。
タイトルに必要な要素は、次の通りです。
例えば、オリジナルの製品を作ることがポイントならその製品の特長を強調するタイトル、流通の仕組みがポイントならその構造を強調するタイトル、といった具合です。
スライドの枚数・時間配分
各項目の時間とスライドの配分は、下記の割合を目安にするのが良いと思います。
それぞれのページに、先ほど作成した事業計画のコンテンツを当てはめます。
コンテンツ | 枚数 | 時間配分の目安 | コンテンツ |
1. タイトル | 1 | 0% | – |
2. 市場機会とニーズ | 1〜2 | 30% | SWOT/ニーズ |
3. ターゲット | 1 | 20% | 市場の特徴/ポジショニングマップ |
4. 具体的なビジネスモデル | 1〜2 | 40% | 4P/ビジネスモデル概念図 |
5. 売上・利益の数値計画 | 1 | 10% | 売上・利益の表 |
持ち時間に応じて、スライドの枚数を調節しましょう(10分未満なら全て1枚で良いと思います)。
プレゼンスライドを作った後は、話す練習や、論理展開の言い回し、質疑応答の対策などをすれば完璧です!
事前課題ではない場合は?
なお、事前準備をする時間が無く、当日にその場で課題に対してプランを作成するというパターンもあります。その場合も、ここで紹介した基本構成に沿って進めればOKです。
もちろん調査などをする時間はないので、前提条件は自分が知っている内容か「推測」になってしまいますが、それで問題ありません。
時間が限られている場合は、ラフでもいいので最初に一通りのプランを作ってしまいましょう。細かいところに気を取られると時間内に完成しなくなってしまいます。ブラッシュアップは後でもできるので、完成を優先させましょう。
試験に備えて、事前に自分で何パターンも作って練習をしておくと、本番でもスムーズに進められるはずです。
ぜひ読んでほしい本
経営戦略の基本や新規事業立案に関するおすすめの本を紹介します。これらの内容を理解すれば、課題だけでなく口頭での説明にも深みがでます。一度身につければ文字通り人生が変わると思うので、ぜひ手に取ってみてください。
「改訂版 経営戦略の基本がイチから身につく本」(著者: 手塚貞治)
この本は、経営戦略の基本をとてもわかりやすく解説してくれているので、まずはこれだけでも読めば十分な知識を得られます!
特に重要なテーマに焦点を絞り、豊富な図版や重要語の解説を通じて、経営戦略をスッキリ理解できるように工夫されています。
実践的でわかりやすい内容で、ランチェスター戦略、SWOT分析、マーケティングの4P、コンプライアンス、IR戦略などの基礎知識もわかりやすく書かれています!
↓購入はこちら↓

「カラー版 マンガでわかる 事業計画書のつくり方」
事業計画書の作成方法をマンガを通してわかりやすく説明してくれます。私もそうですが、文字ばかりだと頭にスッと入ってこない…という人には特にオススメです。
マンガといっても、内容は本格的。事業計画書の構成要素やプロセスをしっかり網羅しているので、楽しみながら気がつけば重要なポイントが身につきます。
後半には詳しい説明も載っており、手元で読みながら順を追って計画書やプレゼンを作るのにも適しています。この一冊で必要十分な役割を果たしてくれるでしょう。
↓購入はこちら↓

事業立案は一朝一夕で出来るものではないですが、基本さえ知っていれば、初めて就活で必要になっても対応できると思います。
完璧でなくても大丈夫。
ぜひ、もう一度最初から読みながら試してみてください!

就活、がんばってくださいね!
この記事では、就活で新規事業の提案をする際の分析と計画策定、そしてプレゼンの方法について紹介します。
初心者の方向けに、”とりあえず真似てみるだけで形になる”フレームワークも紹介しますので、ぜひ活用してみてください。