プレゼンを作るのって難しいですよね、でも時間もないですしとりあえず作らなきゃ…
あれ、もしかしていきなりスライドを作り始めているんですか?
はい。そうですが、まずかったですか?
そうですね、適当に作ると全く相手に響かない、意味のないプレゼンになる可能性があります。
それはまずいですね…でも、どうしたらいいか見当もつかないです。
大丈夫。これから説明する通りの手順を踏めば、意外と簡単に早く、“的を得た”プレゼンを作ることができるようになりますよ!
多くの場合、プレゼンの目的は「人を動かすこと」です。
ビジネスであれば、購入、出資、承認、採用などがイメージしやすいと思います。研究の学会発表のように、一見すると人を動かす目的には見えないプレゼンも、「成果を正しく伝え、同じ分野の研究者で議論し、共に切磋琢磨して研究を進めていく」という意味では同じだと思います。
人を動かすという目的を達成するためには、人の行動原理に沿ったプレゼンの構成が必要になります。何も目的や手段を考えずに「今ある情報をとりあえずスライドに載せる」という作り方は、あまりお勧めはしません。
それが、「的を得ているプレゼン」と「的を得ていないプレゼン」の違いだと思います。一見すると難しそうに見えますが、しっかりと手順に沿って目的や全体の構成を考えれば、意外と簡単。
ぜひ、読みながら試してみてください。
ゴールデンサークルとは
ゴールデンサークルとは、人の共感を生む際にはWhy→How→Whatの順番で伝えることが重要であるという理論のこと。リーダーシップの専門家であるSimon Sinek氏が、2009年にTEDで提案したフレームワークの一種です。
こちらの図が、“ゴールデンサークル”です。3つの輪は、それぞれ下記の内容を指しています。
ポイントは、3つのうち一番内側の輪である“Why”から始めるということ。このWhyが抜けていると、「感情」に訴えかけることができず、人は動きません。
具体的には、なぜそのサービスを開発したのか、それによって世界や人の生活をどう変えたいのか、自分は何をしたいのかなどです。
Why→How→What の順に説明することで、直観的に人の意思決定に働きかけることができ、人は自分自身のために能動的に動く(=欲しい、協力したい、ファンになりたい)というわけです。
人がそう感じる理由として、Simon Sinek氏は次のように説明しています。
(前略) 私がお話していることは私の意見ではなく、全ては生物学の原理に基づいていることです。心理学ではなく生物学です。 ヒトの脳の断面を上から見ると、脳は3つの主要な部位に分かれているのがわかります。それはゴールデンサークルと対応しています。
一番新しいホモサピエンスの脳は大脳新皮質であり、「何を」のレベルに対応します。新皮質は合理的、分析的な思考と言語とを司ります。
内側の二つは大脳辺縁系に対応し、これは感情、信頼、忠誠心などを司ります。またヒトの行動を司り、全ての意思決定を行いますが、言語能力はありません。(中略)
直感的な決定はここから生まれます。時には誰かにあらゆる事実やデータを伝えても、「細かい事実は分かったけど、どうも納得感が得られない」と言われることがあります。どうしてここで “感”なんでしょうか?理由は脳の意思決定をする部位は言葉を扱えないからです。せいぜい「分からないけど納得 “感” がない」という言葉なのです。時には胸の内一つとか、魂の導きに従ってとも言いますが、でも別に頭以外の部分で意志決定するわけではありません。すべては大脳辺縁系で起きています。
How great leaders inspire action | Simon Sinek
ゴールデンサークルは脳の構造と一致していて、Whyは意思決定をする領域に直接働きかける、というわけです。
Why, How, Whatの例
例えばこのサイト、Presenunivを例にしてみると、次のようなWhy, How, Whatが設定されています。
本サイトの場合
この記事でいったいどれほどの方の心を動かせるかは分かりませんが、少なくとも私はそのつもりで書いています。
せっかくなのでTEDでも紹介されていたAppleの事例も見てみましょう。とても腑に落ちる、納得感がある内容だと思います。
Apple
こうしてみんなiPhoneやMacを「良い」と思い、買うわけです。(私もその一人です)
以上がゴールデンサークルの内容です。輪の内側から外側に向かってWhy→How→Whatと説明することで、人の共感や意思決定を促し、彼らが自分自身のために動くようになるということです。
なぜプレゼンにも活用できるのか
このゴールデンサークルは、ブランディングやマーケティングのためだけの手法ではありません。脳の構造と機能が影響する全ての領域、すなわち人の意思決定に関わる全てのコミュニケーションに応用できる内容です。日常の中の会話やメール、もちろんプレゼンもその一つです。むしろ“プレゼンテーションそのもの”を指していると言っても過言ではありません。
にも関わらず、私たちがプレゼンを作るときは最も重要なWhyの部分を置き去りにして話をしてしまうことが良くあります。
今回やることは何か、対象の製品は何か、どのようなスケジュールで行うか、という説明はするのに、なぜそれをやるのかは説明しない。結果として、聞き手の表情が芳しくなかった…という経験がある方も多いのではないでしょうか。
スライドのデザインや話し方なども確かに大切ですが、小手先のテクニックにだけ気を取られてプレゼンを作ってしまうと、大事な目的を見失います。
「聞き手にどう動いてほしいのか」というプレゼンの本来の目的を果たすためにも、準備を始める前に一度立ち止まり、まずはWhyから考えてみてください。その後で、How, Whatを含めた全体のメッセージを構成してみてください。そうすれば、聞き手が大きく頷く姿を想像できるようになると思います。
Why, How, Whatのプレゼンでの役割
最後に、Why, How, Whatのそれぞれの項目を具体的にどのようにプレゼンに落とし込むかについて、簡単にポイントを紹介します。それぞれの詳細を煮詰める方法については、別記事でさらに丁寧にお伝えしますので、お楽しみに。
Why:なぜプレゼンをするのか
最も大切なWhyは、しっかりとキーポイントを押さえてブレないようにしなければいけません。
プレゼンの構成でいうと目的や背景に相当します。
「なぜ私はこのプレゼンをするのか」を振り返って事前に深く考えをまとめることで軸がぶれなくなり、説得力が増します。それを聞くことで、相手は安心するのです。
Whyを具体的にプレゼンに反映させる方法はこちらの記事で紹介しています。ぜひご覧ください(画像クリックで新しいタブが開きます)。
How:どのように伝えるか
Whyを実現するための道筋を示すことがHowの役割です。方法、スケジュール、メリットデメリットなどがHowに相当します。
Howの役割
こうした補足情報を交えながら伝えることで、WhyとWhatをブリッジし、聞き手に一歩を踏み出させることができるようになるのです。
What:何を伝えるか
具体的な提案内容や依頼、結論がWhatになります。
Whatの役割
プレゼンの性質によっては、HowとWhatの順番を入れ替えたほうが分かりやすいこともあると思います。
ここまでのWhyとHowの説明がしっかりと構成されていれば、Whatはシンプルに分かりやすく、具体的な方が良いでしょう。最後にはっきりと印象に残して行動につなげる役割です。
なるほど…スライド資料を作るときにこれまで何も考えていませんでしたが、これだけで全然結果が変わりそうですね。
はい、事前にこうしたフレームワークを使用すれば、自分の考えも明確になりますし、これまで気づかなかった点も見つかります。メッセージ性や論理性もどんどん洗練されていくと思いますよ。
自分の考えを明確にしたうえでゴールデンサークルのような相手の感情に直接働きかける方法を活用すれば、プレゼンの相手から面白いほど“Yes”がもらえるようになるかもしれません。
ぜひ参考にしてみてください!
その他のゴールデンサークル関連記事もぜひご覧ください。
最後に、Simon Sinek氏のTED動画を紹介します。
本サイトでは、そのほかにもプレゼンにまつわる様々なノウハウを紹介しています。他の記事もあわせて読んで試すと、相乗効果があるはずです!
この記事では、ブランディングなどに使われる手法である”ゴールデンサークル“(Golden Circle)理論を応用した、プレゼン設計の方法について解説します。