発表やプレゼンの後の質疑応答が嫌いです!
はは…分かります。確かに何を聞かれるか分からないと怖いですよね。
はい…本当に。
大丈夫なようになりたいです。
質疑応答にも、上手く答えるためのコツがあります。
答えに詰まったときに対処できるテクニックもあるので、一緒に見てみましょう!
プレゼンで不安に感じる要素は、例えばこちらの記事でまとめているように、いくつかあります。
その中でも、ほとんどのプレゼンの後に控えている「質疑応答」はとてもストレスがかかりますよね。
ビジネスの場面では比較的質問の目的ははっきりとしているものの、自分の回答次第で結果が大きく変わるプレッシャーがあります。一方、学会での研究発表などでは質疑応答の時間に様々な議論が繰り広げられたり、中には婉曲的な言い回しや揚げ足を取る質問がくることもあります。
どんな質問が来るのか?
想定外の内容だったらどうしよう?
緊張して質問の意味が理解できないかもしれない…
そんな心配で頭がいっぱいになってしまうと、上手くいくものも上手くいかなくなってしまいますよね。
特に発表に慣れていないと、考えるほど頭が真っ白になってしまうと思います。
この記事では、私の経験を踏まえながら、初心者の方でもすぐに使える質疑応答のコツや、もしもの時の対処方法をまとめて紹介します。
マニュアル通りに質問をパターン分けして順に質問内容を確認するだけで、難しい質問も乗り切ることができます。
まずはこれだけ覚えておけば、多くのケースをカバーできるようになるので、ぜひじっくり読んでみてください!
4種類の質問
プレゼンに対して質問される内容には、決まったパターンがあります。
そのパターンさえ押さえておけば、どのように回答するのが適切かは自ずと決まってきます。
パターンは、大きく分けて4つ。
それぞれの場合について、判別方法(質問のされ方)と回答例を見ていきましょう。
判別方法(質問のされ方) | 回答例 | |
1. 確認 | ~ということですか? | はい、その通りです/いいえ、これは… |
2. 詳細 | ~について教えてください | こちらは…(詳細説明) |
3. 理由 | 〜はなぜでしょうか? | 理由は○○です |
4. 意見 | ~と思いますがいかがですか? | ご意見有難うございます。その点に関しては…(同意or反論) |
1. 確認
プレゼンの内容に対し、質問者の認識が正しいかどうかを確認する質問です。
質問者がプレゼン内容の一部を繰り返し、自分の理解を説明したあと、「~ということですか?」と聞かれたら、このタイプだと考えられます。
この場合、質問はクローズドクエスチョンですので、基本的にはYesかNoで答えればOKです。
Noの場合は、正しい内容を説明し直しましょう。
確認タイプの質問をしてくる場合、その内容はそこまで複雑でないことが多いので、発表で説明した内容に少しだけ言葉を足して補足をする程度でも良いと思います。
2. 詳細
プレゼンの内容の一部に対し、より詳細な情報を求める質問です。
「~について教えてください」「~とは、どういう意味ですか?」などと聞かれた場合は、このタイプです。
質問者はより詳しい情報を欲しているので、キーワードの細かい説明や、前後関係などを補足して説明すればOKです。
もし補足資料としてその他のバックデータなどを用意していれば、より説明がしやすくなります。
3. 理由
理由や根拠、因果関係など、プレゼンの論理展開について疑問を持った場合にされる質問です。
「~となるのはなぜですか?」「どうしてこのようになったのでしょうか」といった形の質問が想定されます。
回答としては、「理由はBです」とダイレクトに回答するのが最もシンプルです。
可能であれば、その後で「AによりBとなり、その結果Cとなります」と論理展開の順を追って説明をし直せば、より親切な回答となります。
4. 意見
プレゼンの発表内容に対し、質問者が異なる意見を持っている際の質問がこのタイプです。
全体の主張、もしくは一部の内容についての反論である場合が多いです。
「~なのではないかと思いますが、いかがですか?」「~の場合は○○になると思いますが、なぜこのような結果なのでしょうか」など、質問者の意見と質問がセットになっているのが特徴です。
またこの質問は、オープンクエスチョン(5W1Hのように回答に自由度がある質問)です。
他の3つに比べて、厄介なシチュエーションになりやすいのがこのタイプ。
回答の際、まずは「ご意見(アドバイス)ありがとうございます」と意見に対してお礼を言うのが雰囲気を良くするコツです。
内容に対する反論を軽減する効果もありますし、自分自身も一呼吸を置いて落ち着いて話始めることができるためです。
その後、相手の意見に対して回答します。
このタイプの場合、質問の意図が分かりづらかったり、回答の仕方に悩む場合も多いです。
中途半端に説明をしようとすると、相手を必要以上に否定することになったり、適切な回答にならない場合もあるので注意が必要です。
そんな時は、次に示す方法を試してみてください!
基本の答え方
全ての質問に対して、可能であれば結論を先に一言で言いましょう。
その後、理由や詳細を説明します。
根拠や理由を説明する場合、可能なら、「理由は3つあります」というように、数字を先に言うと相手はこの後説明される内容を具体的にイメージできるため、理解しやすくなります。
聞いている人は先に結論がわかるので、その後の説明を聞く時に安心して内容を受け取ることができます。もちろん誤解も少なくなり、理路整然とした説明になります。
なるほど…
ただそうはいっても、その数秒の間に頭の中で整理してから話し始めるというのも、なかなか難しいような…
実際にはっきりと頭の中でイメージできていない場合は、無理に結論を先に言うと墓穴を掘ることになるので、もちろん無理をする必要はありません。
そんな、相手の質問の意図や適切な回答が分からず混乱してしまいそうなときは、当てずっぽうで話すのではなく、まずは相手の意図を確認しましょう。
相手に聞くことで考えを整理することもできますし、考えをまとめるための時間稼ぎにもなるので一石二鳥です。
質疑応答は、必ずしも一問一答である必要はありません。
相手との自由な対話の時間と捉えれば、どのように話を進めても大丈夫です。
4回までならチャンスあり
どうしても相手の意図を捉えきれなかったり、質問の意味は分かるけれども回答が何も出てこないとなると、冷や汗をかいてしまいますよね。
そんな緊急時を乗り切るための対応方法を紹介します。
この手順に沿って進めることで、時間稼ぎをしながら質問を単純化して、回答をしやすくすることができます。
一発で答えられなくても大丈夫。
最初の質問を保留にしたまま、最大で4回までなら堂々とやり取りをすることができる方法です。
1. 聞き返す
質問に対して答えられない!
そう思ったときは、まずは聞き返しましょう。
「すみません、もう一度お願いします」と、単純に聞き取れなかったのを装えば大丈夫です。
聞き取れなかったからなのか、それとも理解できなかったからなのかは、他の人にはわかりません。
また仮に理解できなかった捉えられても、質問の意図を聞き返すのは全く恥ずかしいことではありません。
特にWeb会議などでは、ネットワーク状況によって音声が途切れることも良くあります。
聞こえなかったと伝えるだけで、相手は質問の最初からもう一度説明してくれる、もしくは重要なポイントのみを再度質問してくれるので、一回目よりも格段に質問を拾いやすくなります。
これで全体の内容を理解して回答できればOKです。それでも難しい場合は、次のステップに進みましょう。
2. 拾えた部分だけを質問返しする
まだ質問内容をはっきり理解できない、もしくは回答がまだ出てこない…というときは、断片的な情報を繋ぎ合わせ、質問返しをして答えに近づきましょう。
理解しやすい内容に自分なりに解釈して、相手の質問内容をはっきりさせます。
このとき先ほど示した4つの質問パターン(確認、詳細、理由、意見)のいずれかに当てはめると、断片的な情報から一つの質問(仮説)を組み立てやすくなります。
例えば、「○○と△△についての理由を知りたい…という質問で宜しいでしょうか」というような聞き方です。
質問返しの内容はあくまで仮説、つまり推測でしかないですが、必ずしも当たっていなくても大丈夫。
当たっていれば正しいと返事がもらえますし、外れていた場合はより短いシンプルな言葉で、要点だけを再度質問してくれるはずです。
質問返しによって、質問を単純化し、より答えやすい状況を作り出すことができるのです。
3. 簡単な部分だけ回答する
ここまでで、相手が何を聞きたいかはほぼ分かっているはずです。
おそらく適切な回答を用意することも出来るのではないでしょうか。
ただ、まだ完全な回答をすることができないという場合は、質問された内容のうちの一部分でも良いので、何らかの回答を返しましょう。
そして、「ご質問の回答になっているでしょうか」とフォローを入れればOKです。
相手がそれで納得すればOK。
もし十分な回答でなかった場合は、まだ解決できていない部分を再度質問されるの可能性が高いです。
その時は、残りの部分についての回答をもう一度探しましょう。
4. それでも答えられない場合
最後は、これまでの3ステップでどうにもならなかった場合の最終手段です。
質問は分かった、でもどうしても答えられない…
となってしまった場合は、潔く質問を持ち帰りましょう。
例えば、「明確に回答することができない(詳しいデータがない)ので、後ほど調べて報告します」などの言い方が良いでしょう。
もしくは学会など一度きりの場面では、「明確な回答はできませんが、今後の研究の参考にさせていただきます。貴重な見識をありがとうございます」などの回答もあります。
また、発表が終わった後に個別に話すというのも一つの手です。
冷や汗をかくような場面でも、この4ステップを順にたどるだけで何とか切り抜けることができるのではないかと思います。
ポイントは、堂々とすること。
分からないことは決して恥ずかしいことではありません。堂々と、分からないことを少しずつ確認していけばきっと大丈夫です!
“回答力”を上げるには
できるだけ早く、適切な回答をするためには、頭の中に事前に回答を用意しておくことが最も効率的です。
その為の”王道”な方法が、想定問答を用意しておくことです。
プレゼンの聞き手がする質問は、目的やシチュエーションに応じてある程度絞ることができます。
例えば、事前にプレゼンの相手を思い浮かべながら、「自分が相手の立場だったら何を知りたいか?」と繰り返し自問自答するのが効果的です。
この記事で紹介した4つの質問パターンを当てはめると、質問の内容を予想しやすくなると思いますので、ぜひ試してみてください。
判別方法(質問のされ方) | 回答例 | |
確認 | ~ということですか? | はい、その通りです/いいえ、これは… |
詳細 | ~について教えてください | こちらは…(詳細説明) |
理由 | 〜はなぜでしょうか? | 理由は○○です |
意見 | ~と思いますがいかがですか? | ご意見有難うございます。その点に関しては…(同意or反論) |
相手を知るためのコツはこちらの記事でも紹介していますので、併せて活用すると効果的です!
プレゼン本番の前に、「この相手だったら何を知りたいだろう?」「それに対して何を答えると満足するだろう?」「なぜそのような回答になるのだろう?」と繰り返すことで、質疑応答だけでなく、プレゼン内容やビジネス、研究などの内容そのものについても深く理解することができるようになります。
その深い理解がより説明の説得力を増し、プレゼン全体の質を上げることにつながると考えています。
プレゼンに不安はつきものです。
質疑応答は、特に緊張が走る瞬間です。
ですが、それも手順を追って準備すれば怖いものは無くなります。
私も、この記事で紹介したプロセスを試行錯誤しながら実践したことで、不安や緊張、苦手意識が随分と減りました。
ぜひ読んでほしい本
学会でのプレゼンや質疑応答のコツを掴むのに最適な本を紹介します。
プレゼンの説明のように、たくさんの選択肢があってもどれがいいか分からなくなってしまうので、まずはこれだけ読めば大丈夫!という厳選した本だけをご紹介します。
回答する際のコツ、研究者向けのプレゼンの話し方、そして英語の学会発表のバイブルです。一度身につければ世界が変わると思うので、ぜひ手に取ってみてください!
この本は日本語のプロの目線から仕事の中でのコミュニケーションについて書かれているのですが、実はプレゼンの質疑応答にも応用できるノウハウの塊です!
本の中で、「話し方」よりも「答え方」が重要で、質問に対する適切な回答ができないと何も考えていない「ゆとり社員」のレッテルを貼られてしまう可能性がある…という少しドキッとする警告がされていますが、読んでみると「確かにそうだよなぁ」という内容。
コミュニケーションの本質をわかりやすく具体的な言葉の使い方と主に教えてくれる、目から鱗の一冊です。
「できる研究者のプレゼン術 スライドづくり、話の組み立て、話術」
学者や研究者向けにプレゼンテーションのスキルを向上させるための具体的なアドバイスをしてくれる本です。スライド作成、話の組み立て、話術などに焦点を当ており、ネットだけではなかなか得られない、「間違いのない」テクニックが満載です。
特に、プレゼンテーションの構造化や視覚的な要素の活用、話の組み立てについての具体的な指南をしてくれるので、学会発表が決まったらぜひ一度目を通しておくのがオススメです。それだけで、必ず自分を救ってくれるはずです!
もし学会が国際学会だったら、この本は必ず読んでほしいです。質問に対する回答もバッチリになります。
学会の口頭発表、質疑応答、ポスターセッション、座長進行、グループディスカッションなど、さまざまなシチュエーションで役立つ英語フレーズが網羅されていて、135の具体的なシチュエーションごとに分類や、400以上の実際の例から必要な部分を探すことができます。
もちろん英語だけでなく、日本語のキーポイントも併記されており、レファレンスブックとして使いやすく工夫されています。
また、こちらの本も理系の英語プレゼンに特化した内容で、読みやすくまとめられています。上記の本が少しとっつきにくいという方は、こちらの方が良いかもしれません。